日本ダイレクトマーケティング学会法務研究部会 オープンセミナー(2018年3月)

◆「機能性表示食品」根拠法等

食品表示法に基づく食品表示基準(内閣府令)において制度の基本事項を規定。制度の運用に係る事項は、ガイドライン等で具体的に規定。(食品表示基準第二条第一項第十号)

疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を除く。)に対し、機能性関与成分によって健康の維持及び増進に資する特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除く。)が期待できる旨を科学的根拠に基づいて容器包装に表示をする食品。

表示の内容、(中略)安全性及び機能性の根拠に関する情報、生産・製造及び品質の管理に関する情報、健康被害の情報収集体制その他必要な事項を販売日の六十日前までに消費者庁長官に届け出たものをいう。

<ポイント> 1.健常な成人を対象にした、健康の維持増進に資する旨の表示が可能 2.機能性の根拠は、製品を用いた臨床試験(原則として特保の方法に準拠)、若しくは製品又は関与成分に関する研究レビュー 3.機能性関与成分が明確 4.安全性(事実上喫食実績)、品質管理、健康被害対応体制について届出済み 5.一括表示以外の表示内容(機能性の表現を含め)が決まっている。

◆臨床試験、研究レビューの条件 (特保との関係)

<特保と違う>

1.最終製品に関するものだけでなく、機能性関与成分に関する研究レビューでも根拠となる

・・・原材料メーカーの作成した研究レビューの使い回しが可能に

2.食経験による安全性確認が可能に

・・・特保は、12週間の長期摂取試験、4週間の過剰摂取試験が必要

3.臨床試験がやりやすい

・・・特保に求められる後観察期間(4週間)が不要。社内ボランティアによる試験も受け付けられている。

<特保と同じ>

1.臨床試験、研究レビューとも、試験対象者は原則として健常者でなければならない

・・・軽症者も除外。ただし、特保の試験で認められている軽症者(BMI:25以上30未満、血圧:140-159mmHg)は特例として認められているが、基本的に健康な人(=機能性のサポートが不要な人)対象では効果は出にくい。

<本体表示事項>

  • 「機能性表示食品」の用語
  • 届出番号:××
  • 商品名: ●▲ ●▲
  • 名称:○○○○
  • 原材料名:・・・、・・・、・・・/・・・、・・・、(一部に××・△△を含む)
  • 内容量:90g(1粒500mg×180粒) 賞味期限:○○/△△/××
  • 保存方法:直射日光、高温多湿の場所を避けて保存してください。
  • 製造者:○○○株式会社東京都△△区・・・・
  • 届出表示:本品には◇◇が含まれるので、□□の機能があると報告されています。
  • 「本品は、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、消費者庁長官に届出されたものです。ただし、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査をうけたものではありません。」
  • 「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」
  • 栄養成分表示(1日当たりの摂取目安量2粒当たり)
  • エネルギー○Kcal、たんぱく質○g、脂質○g、炭水化物○g、食塩相当量○g
  • 機能性関与成分: △△ ○g(2粒当たり)
  • 1日当たりの摂取目安量:2粒
  • 摂取方法:水またはぬるま湯と一緒にお召し上がりください。
  • 摂取をする上での注意事項:本品は多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。
  • 調理又は保存の方法:直射日光を避け、涼しいところに保存してください。
  • 「本品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。」
  • 「本品は、疾病に罹患している者、未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を対象に開発された食品ではありません。」
  • 「疾病に罹患している場合は、医師に、医薬品を服用している場合は医師、薬剤師に相談してください。」
  • 「体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止し、医師に相談していください。」
  • お問い合わせ先:0120-***-***

◆通信販売業者と機能性表示食品

1.販売商品に機能性表示食品を採用するに当たって

•機能性訴求は、売上げに寄与するか?

・・・機能性の実情(消費者が効果を実感できるか?)

・・・制度に対する消費者の理解

・・・機能性表示食品であるが故の制約                    

•安全衛生上のリスクは?

・・・一般食品に比べれば、品質問題リスクリスクは小さい

•制度上の潜在リスクは?

・・・自主的届出撤回

・・・行政の買い上げ調査・収去試験(今後本格化)

・・・競争相手の干渉(特許係争を含む)

2.機能性表示食品を販売するとき

•本体表示の確認

・・・消費者庁Webサイトの公開資料で確認 •媒体表現における注意事項

3.今後の動向

ⅰ開示資料から見る機能性食品の効果の実像

•研究レビューで採用された論文の少なさ・・・3報中1報は効果無しや採用された論文が自社試験というものも

•臨床試験の質・・・本年度中はUMIN登録不要 

•社員による臨床試験・・・味が分かるため、試験品が高評価になりやすい

ⅱ消費者の認知(電通調査)

•認知率:「制度の内容を知っている」(8.1%)、「ある程度、制度の内容を知っている」(29.5%)、「名称を聞いたことがある程度」 (41.5%) 合計(79.1%)

•認知経路:「テレビ」(50.1%)、「店頭」(31%)、「新聞」(23.6%)

ⅲ機能性表示食品であるが故の制約

•必須表示事項

•機能性訴求表現の制約

◆食品の機能性に関する特許審査基準の変更について

1.従来の審査基準 •新規な食品を開発した場合、その組成、製法については、他の工業製品同様特許が認められる •食品には、機能性に関する「用途発明」が認められなかった

・・・「電着下塗り用塗料」に“船底への貝類付着防止機能”を見出した。

              「用途発明」として特許が認められていた

・・・食品の用途は「食用」であり、食品による「健康改善」は医療行為に該当するため産業上利用できない発明

              特許は認められない

2.知的財産保護の視点から見た機能性表示食品制度の問題点 •先行企業の研究レビューを引用すれば、後発企業が容易に機能性表示を行える

3.新たな審査基準(4月中を目途に運用開始) •食品の機能性についても、他分野同様の判断に基づいて審査する •植物・動物については「用途発明」を認めない(○○が高めの人用鯖=NG、 ○○が高めの人用魚肉ソーセージ=OK) •機能性に関する特許が認められても、機能性を謳っていない既存の食品を制約するものではない

<参考例1>

①特許請求の範囲

L.菌およびS.菌をスターター菌として製造する、NK細胞活性化作用を有する発酵乳。

②判断のポイント

L.菌とS.菌との2つの菌株が入った発酵乳が知られていない場合、特許可能。

<参考例2>

①特許請求の範囲

非重合体カテキン類をA重量%含有し、非エ ピ体カテキン類とエピ体カテキン類の含有重量比率がB:C以上である体脂肪蓄積抑制作用を 有する容器詰飲料。

②判断のポイント

非重合体カテキン類を上記濃度で含有する容器詰飲料は知られておらず、その濃度に臨 界的意義がある(その濃度を境に特性が大きく変化する)場合、特許可能。

◆機能性表示食品の媒体表現に関する留意事項

   大前提:機能性について、届け出た表現から逸脱しない (媒体制作時に勝手に付け加えない)

◎ 届出ガイドラインに於いて“認められない”と例示されている表現は厳禁 •疾病の予防効果、治療効果の訴求若しくは暗示

・・・明らかに疾病の予防にあたる場合(例)「動脈硬化の予防」「骨粗しょう症の予防」「インフルエンザの予防」等

・・・暗示にあたる場合「血液をさらさらにする」「血管内のプラークを減らす」「低下した肝機能を改善する」「γ-GPTの数値を改善する」「骨が溶け出すのを抑え骨が脆くなるのを防ぐ」等 •健康の維持・増進の範囲を超えた、意図的な健康の増強

・・・「皮膚、髪、爪が丈夫で美しくなる」「満腹感の持続により食べ過ぎを抑える」「朝食べれば夕食までの摂取カロリーを抑える」等 •科学的根拠のない機能性表現

・・・身体の部位の機能の一部である届出表示の内容を超えて、部位の健康維持を訴求

・・・生体に作用する機能が不明確(例)「免疫細胞の数を増やす」「体重を減らす」等

・・・一方向の効果を両方向に適正に作用する可のように表現(例)「血圧を正常に保つ」「中性脂肪の改善に役立つ」等

◎機能性表示食品の広告に関する主な留意点(平成27年6月)より •消費者庁(消費者庁長官)が、評価・許可したと誤認させる表現をしない

・・・NG広告表現:「消費者庁が認めた機能性表示食品」 •関与成分の機能として届け出たものを商品自体に機能があるかのような表現をしない

・・・届出表示:「本品△△には○○(機能性関与成分の名称)が含まれます。○○には、血中コレステロールを低下させる機能があることが報告されています」

・・・NG広告表現:「血中コレステロールを下げる△△」 •関与成分以外の成分にも機能があるような表現をしない

・・・届出表示:「本品には難消化性デキストリン(食物繊維)が含まれます。難消化性デキストリン(食物繊維)は糖の吸収をおだやかにします」

・・・NG広告表現:「本品には難消化性デキストリンや大豆イソフラボンが含まれているので、糖の吸収をおだやかにします」

(食品表示法では関与成分以外の成分を強調する表示を禁止しており、上記の例では、「難消化性デキストリン、大豆イソフラボン含有」といった表現の他、 「大豆イソフラボン」を特記する表現もNG)